脱炭素社会の実現に向け、自動車・物流・建設機械などの分野で注目されている燃料のひとつが、
HVO(Hydrotreated Vegetable Oil/水素化植物油)です。
HVOは、植物油や廃食油などの油脂を水素化処理することで製造されるバイオ由来の燃料です。
近年では「リニューアブルディーゼル(Renewable Diesel)」と呼ばれることもあり、従来の軽油に代わる次世代燃料として、日本国内でも利用・実証が進められています。経済産業省でも、HVOを軽油と同様の炭化水素系燃料として、脱炭素に貢献する次世代の軽油代替燃料の一つに位置付けています。
HVO(水素化植物油)とは?
HVOとは、Hydrotreated Vegetable Oilの略称です。
「Vegetable Oil」と呼ばれていますが、実際には植物油だけでなく、廃食油や動植物由来の油脂などを原料として製造される場合があります。
これらの油脂を水素化処理・精製することで、軽油に近い性質を持つ炭化水素系燃料へと変換します。
環境省の試験でも、廃食油を水素化分解して製造したHVOが使用されており、試験に用いられたHVOはJIS2号軽油の規格を満たすものとして評価されています。
HVOが注目される4つの理由
1.再生可能な原料を活用できる
HVOは、植物油や廃食油などのバイオマス由来原料から製造できます。
化石燃料のみを使用する場合と比較し、再生可能資源を利用できることが大きな特徴です。
特に廃食油など、本来廃棄される資源を燃料として再利用することで、資源循環にもつながります。
2.ライフサイクルでGHG排出量削減が期待できる
HVOを燃焼させる際にもCO₂は排出されます。
しかし、バイオマス由来の原料は、植物が成長する過程で大気中のCO₂を吸収しています。
そのため、原料の調達・製造・輸送・燃料使用までを含めたライフサイクル全体では、化石由来の軽油と比較して温室効果ガス(GHG)の排出削減が期待できます。
実際の削減率は、使用する原料や製造方法、輸送方法などによって異なります。
資源エネルギー庁も、バイオ燃料について、植物等が成長過程でCO₂を吸収するため化石燃料に比べ低炭素な燃料であると説明しています。
3.既存ディーゼル車・設備への活用が期待される
HVOの大きな特徴のひとつが、従来の軽油に近い炭化水素系燃料であることです。
そのため、車両・エンジン・燃料規格などの条件が合えば、既存のディーゼルエンジンを大幅に改造することなく利用できる可能性があります。
こうした燃料は一般に**「ドロップイン燃料」**と呼ばれます。
車両をすべてEVや新型車へ入れ替えることなく、既存設備を活用しながら脱炭素化を進められる可能性があるため、トラック・バス・建設機械などの分野でも注目されています。
※使用可否については、車両メーカー・エンジンメーカーの指定燃料や燃料規格を事前にご確認ください。
4.軽油とは異なる燃料特性
HVOは一般的な軽油と比較して、
・セタン価が高い
・芳香族成分が非常に少ない
・硫黄分が少ない
・化石燃料依存を低減できる
といった特徴を持ちます。
環境省によるHVOの試験でも、セタン価が高く、密度が低いことや、芳香族分をほとんど含まないことなどが特徴として報告されています。
なお、排出ガスへの影響は、エンジン・後処理装置・運転条件などによって異なるため、一律に「PMが必ず減少する」などとは言えません。
HVOと従来の軽油の違い
一般的な軽油は主に原油を精製して製造される化石燃料です。
一方、HVOは植物油・廃食油などのバイオマス資源を原料として製造することができます。
つまり、
従来の軽油
→ 化石資源を中心とした燃料
HVO
→ 再生可能な原料を活用できる軽油代替燃料
という点が大きな違いです。
電動化だけでは対応が難しい大型トラック、バス、建設機械などにおいて、既存の内燃機関を活用しながら脱炭素を進める選択肢のひとつとして期待されています。
経済産業省の資料でも、トラック・バス・建設機械などの陸上輸送分野における短中期的な脱炭素手段としてHVOが取り上げられています。
HVOはどのような分野で使用できる?
HVOは、主にディーゼルエンジンを使用する分野での活用が期待されています。
たとえば、
・トラック、物流車両
・バス
・建設機械
・発電機
・産業機械
・イベント等の仮設電源
・モータースポーツ関連施設
・企業のCO₂削減実証
・研究・開発用途
などです。
特に、保有している車両や設備をすぐに電動化することが難しい企業にとって、既存資産を活用しながら環境負荷低減を進められる可能性があります。
HVOとFAME(従来型バイオディーゼル)の違い
「バイオディーゼル」と聞くと、廃食油を原料としたBDFを思い浮かべる方も多いかもしれません。
従来型のバイオディーゼルとして広く利用されてきたのが、**FAME(Fatty Acid Methyl Ester/脂肪酸メチルエステル)**です。
一方HVOは、油脂を水素化処理して製造します。
経済産業省では、
FAME:油脂をメチルエステル化して製造
HVO:植物油等を水素化分解して製造
と整理しています。
製造方法だけでなく燃料の化学的性質も異なるため、HVOは従来型のFAMEとは別の燃料として考える必要があります。
脱炭素化の選択肢として広がるHVO
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、自動車・物流・建設・産業分野ではさまざまなエネルギーの活用が検討されています。
EV、水素、合成燃料、バイオ燃料など、それぞれの用途に適したエネルギーを使い分けることが重要になります。
その中でもHVOは、
「今あるディーゼル車・設備を活かしながら脱炭素化を進められる可能性がある」
という点で注目される燃料です。
株式会社モトリティでは、HVOをはじめ、カーボンニュートラル燃料・試験燃料・特殊燃料など、用途に応じた燃料のご相談を承っております。
HVOの導入、実証試験、必要数量、用途などについて検討されている企業・団体様は、お気軽にお問い合わせください。
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